【令和6年度診療報酬改定】薬局における医療DX推進整備体制加算の要件を項目別に徹底解説!!

2024年は2年に1度の診療報酬改定が行われる年です。

今回は令和6年度調剤報酬改定にて新設された「医療DX推進整備体制加算」について解説します。

加算が新設された背景から、現場で必要とされる要件、実際の取り組み方まで解説します!


※令和6年6月1日時点での情報となります。最新の調剤報酬内容とは異なる可能性がありますのでご注意ください

1、令和6年度診療報酬改定にて新設される「医療DX推進整備体制加算」は4点!

「医療DX推進整備体制加算」は患者ごとに月に1度 4点 算定可能です!!

参考:日本薬剤師会 調剤報酬点数表(令和6年度6月1日施行)

月間1000名の患者さんが来局する場合だと、480,000円/年の利益となります。

年間で換算するとかなりの額になります。

「地域支援体制加算」が減算されたため、薬局経営において算定必須項目となります。

要件はそれほど厳しくありませんので、必ず算定できるようにしておきましょう!

医療DX推進のために新設

「医療DX推進整備体制加算」は名前の通り医療DXを推進」させるために新設されました。

近年、医療業界でDX(Digital Transformation)が注目されています。

DXとは、AI、データなどのデジタル技術を活用して日常生活をより良いものへと変革することです。

では、「医療DX」とはどういうことなのでしょうか。

厚生労働省は以下のように定義付けています。

/

保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータに関し、全体最適された基盤を構築し、活用することを通じて、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えていくこと。

厚生労働省 医療DXについて(その1)

具体的には、マイナ保険証や電子カルテ情報共有サービスを活用することで

・医療機関、薬局間での問い合わせ等の事務負担軽減

・診療情報、薬剤情報などの医療情報が多職種リアルタイムな共有が可能

重複投薬、多剤投与の予防が可能

などが期待できます。

参考:厚生労働省 オンライン資格確認の次は電子処方箋! 〜いま、進めよう!〜

医療DXの現状

現状では、医療DXはどの程度浸透しているのでしょうか。

最近、話題のマイナ保険証から考えてみましょう。

2021年10月20日にマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになりました。

皆さんはすでに作成しましたか?持ち歩いていますか?

2023年11月におけるデジタル庁のネット調査では「マイナンバーカードを常に持ち歩いている人」の割合は45.8%

2人に1人程度は常に携帯しており、マイナンバーカード自体の普及は進んでいますね。

しかし、2024年3月における全国の医療機関・薬局でのマイナ保険証の利用実績はたったの5.47%

参考:デジタル庁 業種別マイナンバーカード取得状況等調査(ネット調査)の結果
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/8adde791-e214-4b5b-b9ad-4eb89a354dbc/2c98d210/20240321_mynumbercard-promotion_outline_02.pdf

参考:厚生労働省 マイナ保険証の利用促進等について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf

2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終了します。

以降は健康保険情報を確認する際にはマイナンバーカード利用が必須となりますが、全く浸透していません。

目指すべき医療DXと現状には大きなギャップがあり、その推進のために2024年6月1日から「医療DX推進整備体制加算」が新設されます。

医療DX推進整備体制加算の9項目の要件とは?

まず、特掲診療料となりますので、算定する際は地方厚生局への届出が必要な点に注意しましょう。

例)2024年7月1日から算定開始予定  ならば  2024年6月31日に地方厚生局に必着

届出漏れに注意しましょう!

実際の要件が以下となります。

参考:厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf

実際の届出様式はこちら

様式87の3の6
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/r6-t87-3-6.pdf

実際の届出様式を参考にすると、

「4、[電子処方箋管理サービスの運用について]に基づく電子処方箋により調剤する体制を有している。」に関しては令和7年3月31日までの経過措置

「6、国等が提供する電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制を有している。」に関しては令和7年9月30日までの経過措置

「7、来局患者のマイナ保険証の利用率」に関しては令和6年10月1日から適用

上記の3点はすぐに取り組む必要がない項目です。

2、医療DX整備体制加算の要件で今すぐ取り組むべき項目

実際に「医療DX推進整備体制加算」の要件を満たすためには、具体的に何に取り組まないといけないのでしょうか。

実際の届出用紙(様式87の3の6)を参考にして、経過措置や不要な要件を除くと、

「1、療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(昭和51年厚生省令第36号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っている」

「2、健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認を行う体制がある」

「3、オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用できる体制がある」

「5、電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理体制」

「8、 次に掲げる全ての事項について、保険医療機関の見やすい場所に掲示し、ウェブサイトに掲載している」

「9、サイバーセキュリティの確保のために必要な措置」

以上の6項目となります!

1つずつ確認していきましょう。

療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(昭和51年厚生省令第36号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っている

つまり、「レセプトのオンライン請求を行っているか」という内容です。

令和6年2月診療分の調剤薬局の社保におけるレセプトオンライン請求率は98.7%です。

多数の薬局はすでに該当している要件だと思います。

参考:社会保険診療報酬支払基金 レセプト請求形態別の請求状況(令和6年2月診療分)
https://www.ssk.or.jp/tokeijoho/tokeijoho_rezept/tokeijoho_rezept_r05.files/seikyu_0602.pdf

もしも、まだ光ディスク等や紙セレプトを使用している場合はオンライン請求への切り替えを早急に検討しましょう。

正確性、効率化を目指す「医療DX」を実践するためにも将来的には薬局経営において必須の項目となります。

健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認を行う体制が整備がある

つまり、「顔認証付きカードリーダーを設置しオンライン資格確認が可能な状況」という内容です。

令和6年4月末時点における調剤薬局の顔認証付きカードリーダーの普及率は全国で95.3%
参考:オンライン資格確認の都道府県別導入状況について(厚生労働省

こちらも、すでに多数の薬局は満たしている要件だと思います。

ただし、顔認証付きカードを設置し、レセコンとの連携が必要な点に注意しましょう。

まだ、設置していない薬局に関しては必ずメーカーに問い合わせて用意しましょう。

オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用できる体制がある

つまり、「マイナンバーカード利用により、診療情報・薬剤情報を活用し調剤している」という内容です。

令和6年3月における薬局のマイナ保険証利用率は全国で4.17%

参考:厚生労働省 「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と利用促進のためのツール・一時金について
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001248133.pdf

マイナ保険証の利用体制は整っていますが、実際の活用まで至っていません。

令和6年6月1日時点では、マイナ保険証の利用率に要件はなく、顔認証付カードリーダーとレセコンを連携させ、診療情報等を閲覧できる状態であれば要件を満たしています。

しかし、同年10月からはマイナ保険証の利用率が一定以上必要なため注意しましょう。

令和6年5月〜7月では、厚生労働省の取り組みとしてマイナ保険証利用人数の増加に応じ最大10万円が支給されます!

参考:厚生労働省 マイナ保険証の利用促進等について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001243199.pdf

この機会に取り組み、10月以降は「マイナ保険証の一定以上の利用率」の要件を満たせるようにしておきましょう。

※令和6年6月1日時点では「マイナ保険証の一定以上の利用率」についての詳細な記載なし

電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理体制

つまり、「電子薬歴を導入しているか」という内容です。

少し古いデータになりますが、「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書(厚生労働省 平成31年3月発表)」によると約7割の薬局が電子薬歴を導入しています。

多くの薬局ではすでに導入しており問題ないと思います。

MEMO
電子薬歴には非常に大きなメリット!!
・薬剤相互作用の自動チェックにより、医療過誤が予防できる
・薬歴情報の入力、検索の効率性UP
・レセプト請求業務の効率化       などなど

電子薬歴の導入には非常に大きなメリットがあるので、導入していない場合は各種レセコン会社に問い合わせてみましょう。

医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医 療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること

つまり、「以下の3項目に関して薬局内に掲示、かつウェブサイトに掲載」という内容です。

ただし、ホームページを有していない場合にはウェブサイトへの掲載の必要はありません

  • オンライン資格確認システムを通じて患者の診療情報、薬剤情報等を取得し、調剤、服薬指導等を行う際に当該情報を閲覧し、活用していること
  • マイナンバーカードの健康保険証利用を促進する等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいること
  • 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを活用するなど、医療DXに係る取組を実施していること

令和6年3月28日付の疑義解釈資料にて、上記3項目を満たす薬局内掲示物は以下のもので差し支えないと通知がありました。

おそらく薬局に送付されているのではないでしょうか。

廃棄してしまった場合は厚生労働省のホームページからダウンロードしましょう。

薬局内に掲示するだけで要件を満たすので非常に簡単な要件です。

サイバーセキュリティの確保のために必要な措置

つまり、「レセコンやインターネットを使用しているパソコンに対してセキュリティ対策をする」という内容です。

具体的に何をすればいいかと言うと、以下のチェックリストを用意し記入、保管しておけば大丈夫です!

薬局確認用と事業者確認用を用意しなければいけないので注意しましょう。

薬局確認用:https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/33630/cs_yakkyoku.pdf
事業者確認用:https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/33630/cs_jigyousya.pdf

見慣れない単語が多いので、僕はこの項目が一番とっつきにくかったです…

ただ、レセコン会社に確認しながらだと、簡単に記入できました!

自分で解決が難しい箇所に関してはプロに任せましょう笑

以上の項目となります。

オンライン、医療DXといった単語を見かけると難しく感じるかもしれません

しかし、1つ1つの項目をみていくと、ハードルはそれほど高くないと思います。

ぜひ、要件を満たして算定していきましょう!!

まとめ
「医療DX推進整備体制加算」を取るにはこれだけ取り組め!

令和6年6月1日から「医療DX推進整備体制加算」が新設。

患者ごとに月1回4点が算定可能。

1000名/月規模の薬局だと、年間480,000円の利益になる。

以下の条件を満たすと届出後に算定可能。

●レセプトオンライン請求を行っている

●電子薬歴を導入している

●顔認証付きカードリーダーを設置し、レセコンと連携している

●マイナ保険証利用促進に関するポスターを薬局内に掲示している

●サイバーセキュリティ対策を行っている

算定のハードルは低めで、将来的に取り組まなければならない項目ばかりです。

他の算定項目が減算されているため、薬局経営においては必須の算定項目となります!!

ただし、経過措置など以下の項目は将来的に要件を満たす必要があるので注意しましょう。

●令和6年10月以降はマイナ保険証の利用率が一定以上必要

●令和7年3月31日以降は電子処方箋を応需する体制が必要

●令和7年9月30日以降は電子カルテ情報共有サービスを活用する体制が必要

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